辞めない理由を見える化する!定着率向上の秘訣

採用環境が厳しい中だからこそ今いる従業員を大切にしましょう

人手不足が叫ばれる中、新卒・中途ともに採用に苦戦している企業は多数あると思います。

さらには、従業員の離職に頭を悩ませることも増えてきたのではないでしょうか?

 「なぜ会社を辞めるのか」という問いは頻繁に議論されますが、より重要なのは「なぜ、この会社を辞めないのか?」という問いに焦点を当てることです。

労働市場は変化し、転職が当たり前になった現代において、従業員が「辞めない」という選択をする理由を深く理解し、言語化することは、企業の人材戦略にとって不可欠です。

特に、若手社会人の「辞めない理由」の現状と、定着率を向上させるための具体的なアプローチを考えていきましょう。

「辞めない理由」が語られない現状と企業が抱える課題

「なぜ会社を辞めたのか?」という問いは転職の際に必ず聞かれる一方で、「なぜ、あなたはその会社を辞めないのか?」という問いは、驚くほど語られていないのが現状です。

これは、多くの社会人が「聞かれないため」に、自身の「辞めない理由」を言葉にする機会がないことに起因しています。

ワークス研究所の調査によると、大企業に勤める20~30代で「辞めない理由」を上司や人事に伝えている就業者は、わずか18.9%でした。

その最も多い理由は「聞かれないから」が38.0%、次いで「話す機会・場がないため」が24.5%です。

これは、企業側にとって大きな課題です。

  • 従業員のエンゲージメントを正確に把握できない: 従業員が何を価値と感じ、なぜ会社に留まっているのかを理解できていないため、効果的な離職防止策や人材育成につなげられません。

  • 人材戦略が画一的になる: 待遇向上や労働時間短縮など、一般的な施策に終始し、個々の従業員の「辞めない理由」に寄り添った施策が打ち出せない可能性があります。


転職が当たり前となった今、「辞めない」という選択こそが、むしろ説明を要する時代になっています。

企業は、この「辞めない理由」を見える化し、共有する機会を意図的に作り出すことで、従業員のエンゲージメントを高め、人材定着に繋げる必要があります。


「辞めない理由」とeNPSの相関性:従業員エンゲージメントの測定

従業員が「辞めない理由」を自覚し、言語化することは、単に個人のキャリア選択に影響するだけでなく、企業の人材戦略にとって不可欠です。

特に、その理由が従業員エンゲージメントと密接に関わっていることが、最新の調査で明らかになっています。

調査結果では、「辞めない理由」は決して単一ではないことが分かっています。

例えば、給与や福利厚生といった「受動的な恩恵」を理由に挙げる若手社会人は多くいますが、そうした理由を選んだ若手ほど、会社に対するeNPS(Employee Net Promoter Score)が低い傾向にあります。

※eNPSとは、「自分が在職している会社で働くことを身近な他者におすすめできる度合い」を10点満点で質問したスコアです。


この結果は、表面的な「辞めない理由」だけでは、従業員の真のエンゲージメントを測ることはできないという重要な示唆を与えています。

辞めない理由のタイプ

eNPSとの関連性

企業への示唆

受動的な理由(給与・福利厚生など)

eNPSが低い傾向

普遍的な制度だけでは、強い定着理由にはなりにくい

稀少な経験(自分だけが得られる)

内なる動機を支える

個別の成長機会やユニークな経験の提供が重要

取り替えのきかない存在感

重要

従業員の貢献を認め、存在価値を高める

多くの若手が選択率の高い「辞めない理由」(例えば「特に辞める理由がないから」「辞めると失うものが多いから」など)を答えた回答者ほどeNPSが低い傾向が見られました。 

つまり、「辞めない理由」を問い直すことで、企業は、より本質的な従業員エンゲージメントの向上と職場改善に繋がるヒントを得ることができます。


「辞めない理由」を増やす戦略:人材定着と企業成長

「辞めない理由」を見える化するだけでなく、それを増やし、高める取り組みを行うことは、企業の人材戦略にとって不可欠です。
待遇の向上や労働時間の短縮といった従来の離職防止策だけでは、従業員がその職場に居続ける強い理由にはなりにくいかもしれません。
これからの企業は、従業員が自社で働き続けるユニークな理由をいかに提供できるかが問われます。

企業がプロデュースすべき「辞めない理由」の創出

企業は、従業員が「なぜ辞めないの?」という問いに対して、「自分にとって納得できる応答」ができる瞬間をプロデュースすることが、今後の人材戦略の要諦となります。

具体的には、以下のような「辞めない理由」を創出することが考えられます。

  • 個別の成長機会とキャリアパスの提供: 従業員一人ひとりのキャリア志向を把握し、リスキリングやセルフコーチングの機会を通じて、「ここでしか得られないスキルや経験」を提供します。例えば、新しい技術分野への挑戦や、プロジェクトリーダーとしての抜擢など、従業員の成長を加速させる具体的な機会を設定しましょう。

  • 「取り替えのきかない存在」としての認識: 従業員の専門性や貢献を正当に評価し、彼らがチームや組織にとって「不可欠な存在」であるという感覚を醸成します。定期的なフィードバックや1on1ミーティングを通じて、従業員の強みや貢献を具体的に伝え、彼らの存在価値を強調することが重要です。

  • 共感を呼ぶ企業文化の醸成: 企業のミッションやビジョンを明確にし、それが従業員の個人的な価値観とどのように結びついているかを伝えます。例えば、社会貢献活動への参加機会の提供や、多様性を尊重する風土作りなど、「この会社で働くことの意味」を従業員が感じられるような環境を整備します。

これらの取り組みを通じて、給与や福利厚生といった「受動的な理由」だけでなく、従業員が自ら主体的に選択し、価値を感じられる「辞めない理由」を増やしていくことが、人材定着と企業成長に繋がります。

「辞めない理由」を問い直し、職場を変える

これまでの若手への「離職防止策」は、待遇の向上、労働時間の短縮、福利厚生の充実など、一面的だったかもしれません。 しかし、これらは誰にとっても同じように提供される制度であり、人がその職場に居続ける強い理由にはなりにくいと指摘されています。


今、企業に問われているのは、以下の点です。

  • 「あなたのなかにある『ここで働き続けたい理由』は、ほかの誰かと比べて、どれだけユニークなものだろうか?」

  • 「その理由を、自社の人事制度や育成体系、キャリアパスは提供できているだろうか」


この問いに真摯に向き合うことで、企業は、従業員が「辞めない」という選択を自覚し、
言語化する機会を創出し、それを高める取り組みを進めることができます。
例えば、定期的なキャリア面談の中で「あなたがこの会社で働き続けたい理由は何か」を従業員に問いかけ、
その理由を尊重した上で、具体的な成長支援やキャリア形成の機会を提案するなどが考えられます。
「辞めない理由」を問い直すことは、組織が従業員一人ひとりの「内なる動機」を理解し、それぞれに合った魅力的な職場環境を構築するための第一歩です。
これにより、単なる離職防止に留まらず、従業員のエンゲージメントを飛躍的に高め、企業の持続的な成長を促進できのではないでしょうか。

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